花散峪山人考

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二つの大きな戦争の間。
街には電気の明かり灯り、鉄とセメントの建物が目立つようになっていった時代。
一方、まだ山々には前人未踏の原生林が多く残り、その深い影の中に伝説、伝承を潜ませていた時代。
濃密に立ちこめる山気と、分厚く積もった落ち葉とを踏み乱し、駆けゆく者がある。
そう、樹々の間に間を荒々しく駆けてゆくのは、修羅だ。
復讐の炎に我が肉を炙る、鬼だ。
最愛の女を無残にも殺められた青年の、復讐の炎にドス汚れた瞳が、仇の姿を深山の中に追い求める。
仇、仇、憎むべき敵。
青年が追いかけ、滅ぼさんとする仇敵とはなにものか。
人も通わぬ深山に巣くい、跳梁し、翻弄するそれは―――人か? 山の怪か?
それは山人。
町里に住まう人々とは異なる、不思議、異形のモノ達。

―――これは、復讐の物語―――

最愛のものを奪われた青年の、山野を駆け巡り追い求め、仇はおろか、関わった者までも巻きこんで、滅ぼしていく物語。

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